「「燃料電池車」は“ガラカー”になる:これだけの理由」について反論
Blogosに表記の記事が掲載されていました。
http://blogos.com/article/99928/
かなり違和感がありましたので、通信業界、電力業界の一つの立場から見た場合の意見を記載します。
■ゼロ・エミッション
そこをとらえて、「水素は空気や水から無限に取り出せるため、枯渇しない究極のエネルギー」と無邪気なことを書くモータージャーナリストもいるが、実はこれはとんでもない間違いだ。水素を水や空気から生産するのには莫大なエネルギーが必要であり、その投入エネルギーが水素に置換されただけの話だ。投入エネルギーが化石燃料であれば二酸化炭素も発生しており、ライフサイクルで見れば、決して「ゼロ・エミッション」ではない。
水素自体を作ることは難しく、エネルギーを使用することになる(コストがかかる)ことはそのとおりだと思います。しかしながら、電力が貯蔵できない特性であることを考えると一つのエネルギーの保存方法として水素という方法もありえるのではないかと考えています。再生エネルギーなど自然に左右されてしまうエネルギーを抑制するのではなく貯蔵するという考え方をすると、今まで捨てていたエネルギーを水素に出来るとなるのではないでしょうか。
■水素輸送インフラ
だが、言うまでもなく、今、自動車の最大の市場は中国であり、モータリゼーションが進んでいくのは新興国、これから自動車が普及するのは途上国である。新興国、途上国で水素を供給するインフラが整い、燃料電池車が普及する可能性は50年以内には困難だろう。21世紀前半で自動車に求められる条件は、途上国を視野に入れれば、燃料が安く手軽に安定的に調達できる、ということになる。水素はその条件からはずれる。
■国と自治体のバックアップ
こうした既存のインフラを押しのけて、巨額の資金を投じて水素ステーションを各地に建設しようという機運が、果たして日本以外の国に広がるだろうか? 可能性はきわめて低いだろう。とすれば、日本が官民あげてFCVの普及に力を入れても、日本だけが突出し、世界のスタンダードにはならない商品になってしまう可能性がある。高度で精緻だが日本でしか普及しなかったために「ガラパゴス化」した携帯電話、いわゆる「ガラケー」と同じ轍にはまる危険性が極めて高いのだ。
水素の扱いが難しいことはそのとおりかと思いますが、自動車は19世紀に産まれ、今新興国にてインフラが普及し始めている時期です。
水素を新興国にすぐに普及させることは困難です。ただ、世界のエネルギーを全て原油に頼ってよいのか、アラブ圏とのパワーバランス、石油枯渇問題(無いのかもしれませんが)、CO2削減、大気汚染などの課題に対して何らかの回答を作っていかなければいけないのが先進国の使命になるのではないかと考えています。日本を始め先進国が取組まないと先に進まないものを、新興国に普及しないからやるべきではないという考え方は産業の進化をとめてしまう考え方になってしまいます。
ガラパゴスについて
日本のガラケーは日本だけが先行したケータイの文化があったこと、エリア展開が異常に早かったことから先行して出来たものです。今のAndroid、iPhoneに見劣りするから駄目なのではなく、ケータイがあったからスマートフォンがあると考えるべきです。ケータイの問題は、国内市場で充分やっていける事業者が海外にて普及させなかったことにあり、ケータイを開発したことを反省するものではありません。
■米欧メーカーの「痛い教訓」
おそらく、海外メーカーが追随しているから大丈夫の反論であるとの認識ですが、憶測の域を出ていないものだと考えます。
■終わりに
近年ではインターネットの普及に匹敵するイノベーションになるのではないでしょうか。
水素燃料電池車は自動車の開発ではなく、新しいインフラを作っていくという、歴史的なインパクトを持つ事業になりえるものだと考えています。そこに取組みを出来る自動車メーカーはすばらしいと思いますし、応援していきたいと思います。
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